悪因悪果
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「償いと言うやつか? 昔お前を酷い目に遭わせたのだから、その埋め合わせをしろとでも? そりゃあ、なんというか……、大きくなったな、戦場ヶ原。おっぱい以外も」
西尾維新氏の『恋物語』を読了。物語シリーズ・セカンドシリーズ最終巻。表紙イラストが5年振りの戦場ヶ原、「彼女が選んだのは、真っ黒で、最悪の手段だった……」というリードに偽りはないけれど、何かいろいろと誤解させてるな。なんでお前が語り部なんだよ、貝木泥舟。言い回しがくど過ぎるぞ、デビューしたころの西尾維新か、お前は。サングラスをかけたアロハ服の、陽気な男がそこにいた──って、異邦の騎士か、お前は。戦場ヶ原が仇敵の貝木を頼るとは、戦場ヶ原の初恋の終わり、まさに、ひたぎエンドというべきか。
貝木が語り部なので、これまで知ることのできなかった、貝木の内面が良く解る。陰気に見えても、意外と陽気なんだな。それに、阿良々木や戦場ヶ原と違い、ビジネス書で紹介されるような手法を使って行動している。高校生がやったら、違和感があり過ぎるからな。おっさんの貝木にはぴったりだ。詐欺師だけどな。
『囮物語』の終盤で千石が予告していた、いかにも総力戦といった最終決戦にはならなかった。本作は、貝木泥舟が千石撫子を騙す物語、それだけの話なのに面白い。貝木サイコ―、惚れ直したぞ、みたいな。千石の予告通りの展開だったら、おそらくは、どこかで見たような、ありきたりの物語になっていただろう。どこにでもある、無難な最終エピソードにならなかったのは、貝木が語り部(もしかしたら主人公)だったからこそ。
完結編でありながら、いつも通りのテンションと展開で、事件も地味なアリバイ崩しだった、『スパイラル 推理の絆』みたいだな。いや、貝木の語りに突っ込みたいところは山ほどあるけれど、本当に面白いよ。セカンドシリーズ最終巻に相応しい。けど、このあと、ファイナルシーズンに続くんだよ。
人は人に影響を与えることもできず、また人から影響を受けることもできない。


