思ってない

 僕が初めてアルバイトをしたのは、16歳の夏、中華総菜店の皿洗いが始まりで。それ以降、いくつものアルバイトをやっているけれど、僕は1度だって、「また、お越しください」と言ったことがない。言わないというよりも、言えないのである。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」は、接客用語の代名詞というか、これがなければ始まらないというか、これ以外にどんな台詞を言うべきか、というくらいに、お客さんに接するのに馴染みの深い挨拶となっているので抵抗はない。ただ、「また、お越しください」だけは別である。この言葉は、16歳以降、どのような仕事をしても、言えることがなかった。
 どうしてだろうと考えたところ、思ってもいないことは、僕は口にできないらしい、と気づいた。高校生のころ、授業中騒いでいる連中に、もう少し静かにしてくだし、と言うことはできた。このことが仲間外れにされるきっかけとなり、いじめられ、孤立する原因となるのだけれど。「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」には、ある程度の感情は籠もっている。お客さんがいなければ、僕がその仕事に採用されることはなかったのだ。そのことに対し、お礼として挨拶をしているのだろう。挨拶だから抵抗はない。
 「また、お越しください」と言ったところで、僕はまたお越しくださいとは思ってもいない。どのバイト先でも、「また、お越しください」とは言えなかったし、言おうとはしなかった。お客さんが来なければ、その会社がなくなり、僕の仕事もなくなってしまうのだけど、思ってもいないことはやはり言えない。15年近くその姿勢できてしまったのだから、余程のことがない限り、今後も変わらないだろう。しかし、言わないことが問題になることは少ない。むしろ問題になるのは、言ってしまった言葉の方である。
人は人に影響を与えることもできず、また人から影響を受けることもできない。
あのねこながい。
最新記事
プロフィール

もぐさ

Author:もぐさ
30代フリーター。アルバイトで食いつないでいます。

体調維持。腹八分目。消化で体力を消耗しない。節約して貯金。同情より金。とにかく金。同情するなら金をくれッ!!

メールやコメントの返信は、著しく遅くなることがあります。申し訳ありません。また、スマホからのコメントは書き込めない場合があります。

連絡先

INCIPIT TRAGOEDIA。
かくして借金返済の日々が始まる。
借りた金は返さなければいけない。

ブログランキング・にほんブログ村へ follow us in feedly

カテゴリ
記事数
検索フォーム
カレンダ
06 | 2010/07 | 08
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
月別アーカイブ
12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06 
リンク
アクセス解析
RSSリンクの表示