キミコア

ブレイク君コア (星海社FICTIONS)ブレイク君コア (星海社FICTIONS)
小泉 陽一朗 きぬてん

講談社 2011-07-15
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 飯田は自分じゃない自分を自分として認め始めている。ちぐはぐを無意識化で許容し始めている。それでいいんだ。お前らはちぐはぐでいるのがいいんだ。

 第1回星海社FICTIONS新人賞受賞作、小泉陽一郎氏の『ブレイク君コア』を読了。本書を読むまで、「ブレイクくんコア」だと思っていたのだが、「ブレイクきみコア」だった。「ブレイクコア」というジャンルの音楽があるようで、その辺に疎い僕にははぁ~(ノ゚⊿゚)ノさっぱり!さっぱり! ただ、浦賀和宏氏のデビュー作、『記憶の果て』と違って、作中に登場した音楽を聴いてみようとまでは思えず(僕がジョージ・ウィンストン氏を聴くようになったのは、浦賀氏の影響である)。あとがきを先に読んで満足してしまった。生きている僕は小説を書く。それで充分ではないか。物語がどうであれ──という訳にもいかないか。

 なんというか、イラストがマイナスのような気も。小柳粒男氏の『くうそうノンフィク日和』のときにも感じたけれど、この内容で、このイラストはないだろう。流水大賞にしても、星海社FICTIONS新人賞にしても、いわゆるライトノベルではなく、ライトノベル要素を含む一般小説のような感じなので、いかにもライトノベルのようなイラストに対し、違和感を持ってしまうのだ。文章と絵で、感覚が違い過ぎる(レベルの上下ではなく、ベクトル方向の違い)。
 星海社FICTIONSを初めて読んだけど、値段が高いのは、B6サイズということの他に、本文イラストがフルカラーという理由もありそうだ(スピンまで付いている)。小柳氏の作品も、小泉氏の作品も、イラストがなければ、普通に無難に満足できたけど、イラストを求める人もいるのだろう。星海社FICTIONSは、箱のない講談社BOXという感じ。ライトノベルのような装丁で、値段はライトノベルの倍以上というのは、どのような読者層を狙っているのか。値段なんか関係なく、面白ければ買うよ、という人たち限定だろうか。
 ようやく、感想らしい感想を書くと、想像していた以上には面白かった。普通に無難に読みやすく、賞を取ったことに違和感はない。人格転移を扱った作品では、西澤保彦氏の『人格転移の殺人』には劣るけど、庵田定夏氏の『ココロコネクト ヒトランダム』には勝る、という感じ。前者はミステリ部分、後者は物語要素での比較になるけれど。
 本作を読んで思ったのは、とんでもなく自分勝手で自己中心な人物、本当に今時の若者を主人公に添えているな、ということ。つまらなくはないけれど、読んでいて、とんでもなく気持ち悪かった。人格転移や、霊能者探偵を許容しても、犯人を捕まえるのが面倒だからって、犯人の魂を人形に入れようとするってどうなの。この最初の段階から納得できなくて、その件の説明はされず、最終的には、犯人本人を依頼人に引き渡すんだよ。魂の抜き取りって、要らなかったんじゃね(というか、物語の根本である、人格転移の原因が弱い。さすがに、そこまでマイナジャンルではないだろう)
 前述の、浦賀氏や西澤氏の著作にも、残虐性や暴力描写、自己中心的な人物も登場するのだが、気持ち悪さだけでは終わらない。物語の面白さ、ミステリとしての面白さ、何か残るものがある。けれど本作は、気持ち悪さだけが、納得できないまま残る。いや、恋愛小説の一面はあるけれど、その方面は、気持ち悪さに押し潰されて、読後感として残らないのだ(この辺、確かに普通のライトノベルでは書けない作品だろう)。
 誰も彼もが主人公ではなく、みんな脇役であれば、まあ、そういうのもいいんじゃね、という感じ。けど、あとがきを踏まえると、これくらいの過剰な書き方は必要なのかとも思う。それでも、納得できないのは変わらない。まあ、単純に、若い世代の感覚に、僕が付いていけなくなっているだけかもしれないが。
人は人に影響を与えることもできず、また人から影響を受けることもできない。

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