帰郷日記3

 ──ここで少し、過去に遡る。

8月3日(金)
 本来、(2012年の)盆休みに帰ろうと考えていたけれど、弟が帰ってくることもなく、父親も体調が悪いので、との理由があって、初めての盆休みに帰郷することはできなくなった。盆休みの食費を減らす計画を断念する。

8月20日(月)
 9月の連休に帰ろうと勝手に決めて電話を掛けたところ、その時期は弟の子供が生まれる予定日のようで、母親が弟のいる名古屋まで行くため、またしても帰郷することはできなくなった。父親と妹とは、一対一で話すのが難しいし、母親不在時に帰るわけにはいかない。誰に借金の相談をするのだ。

9月19日(水)
 9月の連休が明けて、実家に電話を掛けてみると、弟の子供は、予定よりも早く、8月下旬生まれたらしい。8月ではなく、最初から9月に電話をしていれば、9月の連休に帰れたかもしれないが、今年中に帰れるのなら、べつに何月でも構わなかった。わざわざ、慌ただしい時期に帰ることもないだろう。ここで、具体的な日にちを決めた。11月26日(月)に有休を取り、23日(金)からの4連休に帰る予定。

10月6日(土)
 「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」前編公開。

10月13日(土)
 「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」後編公開。

10月31日(水)
 「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ」は、前編と後編を同じ日に続けて観ようと考えていたけれど、DVDを買うことは決めているので、劇場へは行かないかもしれない。主題歌シングルはどちらも購入済み。

11月10日(土)
 夜行バスのチケットを購入。帰る日が決まっているのなら、もっと早くに予約しておくべきだったけど、まだ2カ月あるからと考えているうちに、残り2週間になってしまった。今の仕事を辞めたら、地元に戻ると決めているので、おそらく、これが最後の里帰りになる。それなら、これまで乗ったことのない、夜行バスに乗って帰ろう。
 昼間のバスは本数が少なく、有休を取って、夕方の便に乗るしかないけれど、夜行バスなら、仕事を終えたその夜の便に乗ることができる。バスに乗って寝て、起きたら地元へ着いているのだ。とんでもなく理想的な時間配分、夜行バス万歳、とこのときは思っていた。
 これまで、というのは、3年以上前、卒業してからの1回と、学生時代の帰郷のことだが、それらはすべて、昼間の高速バスを使っていた。料金が、新幹線の半分で済むのである。時間に追われて帰るわけではない。どちらを選ぶのかは言わずもがな。自分で稼ぐようになったら尚更。
 チケットは、いつも当日に買った。当時は、一時間に一本のバスが出ていた。もし席がなかったとしても、次の便に乗れば良かった。人で混み合う、一般的な連休は避けていたので、満席にはならないだろうと考えていたのだ。実際、チケットが買えないことは一度もなかった。
 今回は、一般的な3連休で、僕のように有休を取って、4連休、5連休にする人が多いかもしれない。それに、昼間より本数の少ない夜行バスなので、当日のチケットが買えるとは思わなかった。というか、もし買えなかった場合、次の便はぴたり24時間後になってしまう。ここへ来て、慌ててバスのチケットを予約することにした。
 高速バスのサイトで、チケットの買い方を調べた。1号車と2号車があったけど、便はひとつだけである。これはどういうことだろう、良く解らなかったので、電話を掛けて訊こうと思ったけど、話すのが面倒になって、ネットで予約してしまった。チケットが買えるなら、席がないということはないだろう。最悪、乗る前に運転手でも訊けばいい。
 無料で予約はできなりだろうと思っていたが、予約をしたら、明日の5時までに入金しろという表示が出て驚いた。予約したのが17時ころなので、12時間以内にということらしい。土日の郵便局ATMは、19時までしか使えない。もう少し遅い時間に予約していたら、一晩経ってから入金しないといけないところだった。
 すぐにお金を引き出して、2番目に近いローソンでお金を払って、チケットを受け取った。1番近いローソンだと、あのウザいおばさんがレジにいる可能性がある。自分から、ムカつくような店に行く必要はないだろう。とりあえず、往復分の夜行バスのチケットを無事購入した。

 10月末の時点では、「まどか☆マギカ」の映画を見に行くつもりはなかったけれど、実家へ戻って3泊するということは、3日間、自由な時間があるということに気づいた。大学生になったとき、必要なものは持ってきてしまった。置いてきたゲーム機があるので、別の部屋のテレビを借りてプレイすることもできるけど、最後に触ったのが10年以上前の機種ばかりなので、帰って早速それをやろう、みたいには思えなかった。残してきた漫画を読むか、持ち帰った小説を読むくらいしかできない。
 学生時代は、1泊か2泊しかしなかったので、読書をしようが、ごろごろ寝ていようが、気にすることはなかったけれど、仕事が休みの3日間、しかも有休を加えている休みを、無為に過ごしたくなかった。何か有効に使えることはないものか、と考えて、「まどか☆マギカ」の映画を見に行くことにしたのだ。東京や大阪より公開日は遅いけど、確か全国で公開しているはず。前編と後編を同じ日に見れば、その日1日は、「まどか☆マギカ」に費やせる。時間を有効に使えて、かつ、見る予定のなかった映画を見ることができる。
 こいつはいいな、そう思って公開映画館を調べてみると、静岡での公開は終了している。いや、正確には、僕が夜行バスに乗るその日に終了するのだエッ? (;゚⊿゚)ノ マジ? なんてこった。ぱんなこった。と思いながら、引き続き調べてみると、浜松での公開が始まるらしい。僕が夜行バスに乗ったその翌日。つまり、地元に着いた当日であるエッ? (;゚⊿゚)ノ マジ?
 浜松というのは、名前しか聞いたことがない。うなぎパイを食べたことはあるけれど。どうしようか少し迷ったものの、無駄にぐたぐた過ごすよりも、県内唯一の上映館へ行って、映画を見てきた方がいい。幸い、電車賃や映画代やパンフレット代諸々、使えるお金は持っている。この連休に使わず、いつ使うというのか。よし、連休の1日は、「まどか☆マギカ」に使おう。そう決めた。

 ──そうして、ようやく現在に戻る。

11月23日(金)承前
 朝食を終え、予定通り9時過ぎには家を出る。先程のルートを逆に辿り、バスで清水駅まで戻る。運転手が同じだったら、怪しまれたかもしれないが、いちいち運転手の顔などチェックしていない。それよりも眠い。やたらと眠い。これが、予定外といえば予定外だった。
 清水駅から浜松駅まで、JR東海道本線で約1時間30分。映画が1本見られる時間である。しかしこれは仕方がない。在来線には、快速も新快速もなく、各駅停車だけである。静岡駅から新幹線を使えば、浜松まで30分も掛からない。けれど、片道2230円。在来線でも、1450円掛かる。これ以上の出費は抑えたかった。もっとも、片道1時間半、往復3時間あれば、小説がたっぷり読める。電車での移動を読書時間に使うべく、文庫本を3冊持ってきていた(『好敵手オンリーワン3』『図書館内乱』『R&R』だけど、これらは結局読めずに終わる)。
 しかし、夜行バスで寝られなかったことにより、電車の中で読書をする余裕はなくなっている。かといって、睡眠を取ってから出掛けるわけにはいかない。前編、後編とも、上映は1日2回、どちらも初回の上映を見るつもりだった。2回目の上映だと、その日のうちに実家へ戻れなくなる。今日は前編だけ見て、明日後編を見に来る、などいう交通費の余裕はない。
 公開初日でチケットが買えるかどうかが気になったけど、どうしても見たい人は、静岡で公開されたときに行っているだろう。もし、初回が見られなかったときは、更なる出費を覚悟するしかない。滅多にない、家族で夕食を食べる機会を逃してしまうが、そのときはそのときだ。
 電車の中で、本格的に眠り込まないよう、それでいてどうにか休息を取らなければいけなかった。体を休めつつ、読書以外にできることは、D-snapでさだまさし氏のライブCDを聞くことだった。

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 9時47分清水駅発、11時14分浜松駅着。
 寝過ごすことも、乗り過ごすこともなく、無事に浜松へ着いた。ここが、かつてカイキさんが住んでいた街か。なんとなく見覚えのある風景だった。おそらく、ブログに載っていた写真だろう。映画の上映時間まで1時間近くあるけれど、初めて行く場所なので、余裕を持って出てきていた。地図では徒歩5分となっていたけれど、遅れるわけにはいかないのだ。時間が余る分には、まったく構わない。
 5分では着かなかったけど、すぐに、ザザシティ浜松は見つかった。ここの3階に、TOHOシネマズがあるのだ。映画館に遠い出入口から入ってしまったようで、館内を回ることになったけど、上映前に着いたのでなんの問題もない。やはり3連休だからだろうか、どの階もかなり混雑していた。というか、これだけの人混みを見たのは、とんでもなく久し振りだった。毎週、休みは部屋にひきこもっているからな。
 3階の劇場ロビーも混んでいたけれど、これがすべて「まどか☆マギカ」を見に来た人ではないだろう。シネマコンプレクスなので、それなりに人は分散されるはず。とりあえず、チケット売り場の行列だろう最後尾に並んだ。前編と後編のチケットを一辺に買いたく、できれば席も同じ場所を取りたい、それが可能かどうかをスタッフに訊こうと思ったのだが、スタッフの姿がない。いや、行列の先頭の方に制服を着たスタッフがいて、客に何か声を掛けているようだけど、チケットを売っている様子がない。というか、チケットカウンタらしきものが見当たらない。
 ハンバーガやポップコーンを売っているカウンタは見えるけど、チケット売り場がないとはどういういことか。などと思っているうちに列が進み、スタッフがやってきて、こちらの券売機をお使いくださいと言ってくる。そこで初めて、あのATMのような機械で、チケットが買えることを知った。しかしそれだと、訊きたいことを訊けないではないか。だが、スタッフはもう、別の人へ声を掛けている。まあいいや、もう、とにかく機械で買ってみよう。
 空いている券売機の前に立つ。画面の指示に従って操作すると、前編と後編、それぞの初回を、同じ席で買うことができた。劇場は、どちらもスクリーン1。まったく同じ席で見れるということだ。初めてで途惑ったけど、慣れれば簡単に買えそうだ。チケットを買ったあとで、グッズ売り場へ移動して、前編、後編のパンフレットを買った。こちらには人間のスタッフがいた。機械の方が温かい対応をしてくれた、と言えるわけがない

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 無事チケットが買えたので、適当な椅子に座って休む。前編の開映が12時15分、後編の開映が15時。前編と後編の間が15分くらい。トイレに行くにはちょうどいい。映画を見終えると17時、すぐに電車に乗っても、バスに乗り換え、実家に戻るのは19時ころ。夕食の時間には間に合わないだろうから、そのことをメールに書いて母親に送信した。浜松へ映画を見に行くことは伝えてあるが、2本見るとは言っていないし、ましてや「まどか☆マギカ」とは言ってもいない。
 開映までの30分は、ロビーをうろついたり、トイレに行ったり、同時上映している映画のポスタやチラシを見たりして過ごした。パンフレットは、映画を見る前に開けてはいけない。上映の10分くらい前、母親からメールの返信があった。先に夕食を食べているとのこと。一緒に食べた方がいいと思ったけれど、明日と明後日も実家にいるのだ。もしかしたら、19時台に帰れないかもしれないし、先に食べてもらっていた方がいい。
 じきに、入場のアナウンスが流れて、入場口へ向かう。入場時刻が決まっているのが、シネマコンプレックスの難点か。まあ、確実に座れるという利点はある。入場口でチケットを渡し、半券と一緒に、来場者特典のA5クリアファイルをもらった。前編と後編の両方でもらえるらしい。劇場に入って、席を探しているときに、座席表の見方を間違えていたことに気づいた。券売機の画面で、劇場の真ん中より後ろを選んだはずなのに、スクリーン手前側の席だった。前の席が埋まっていて、後ろの席が空いているのはおかしいと思ったんだよ。しかし、もう買ってしまったものは仕方ない。今や席はほとんど埋まっている。予約せずに、初回上映が見れるだけで充分だ。
 ざっと見たところ、館内は若い人が多かった。若いというのは、僕を基準にして、同年代か、それより下の人たちのことである。若くても中学生か高校生くらいで、さすがに、小学生に見える子供はいなかった。まあ、作品の内容的にそんな感じだよな。混雑の中で自分の席を見つけたのだが、右隣の席にいるのは、明らかにおっさんだと解る、頭の禿げたおっさんだった。いや、おっさんだろうが、禿げていようが、「まどか☆マギカ」を見たくて来ているのだ。その歳で、ひとりで来るのは立派だよ。
 僕が気になったのは、コーラを飲んで、ポップコーンを食べていたことだ。ロビーで飲み物食べ物を売っていて、座席には、ドリンクやトレイを置くためのホルダが付いている。場内で、飲み食いしても構いません、ということだけど、僕自身、映画を見ながら飲み食いすることがないので、近くで飲み食いしているのが気に掛かるのだ。指定席なので、場所を移れないのも、シネマコンプレックスの難点か。まあいいや、せめて予告編のうちに、ごくごく、カシュカシュを終えてくれますよう。幸いなことに、左隣の席に座ったのは、学生のような男の人で、飲み物も食べ物も持っていなかった。うむ、それで良し。コーラとポップコーンに挟まれてはたまらない。

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【このとき買ったパンフレットを、未だに見ていない。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のパンフレットも同様】

 前編を見終わり劇場を出て、トイレで用を済ませて、先程座った椅子に座る。眠い。やたらと眠いけど、後編を終えるまで我慢しなければ。10分前に入場のアナウンスが流れ、再び入場口へ向かう。渡されたクリアファイルは、前編と同じものだった。なんだこれ、特典ファイルを間違えたのかと思い、他の客のファイルをこっそり見てみると、やはり、前編と同じものだった。ううむ、前編と後編で、同じ絵柄のファイルを配っているらしい。おそらく、数量限定だろうから、もらえただけで良いとしておこう。
 もう1度、禿げたおっさんと男子学生に挟まれる。まあ、そうだろうな。前編と後編が同時公開なのだから、別の日に来るより、同じ日に見る人の方が多いのだろう。実際、映画館もそれを見越して、前編と後編の上映時間が重ならないようにしているのだ。徹夜同然で来たけれど、どうにか眠らずに見ることができて助かった。往復数時間掛けて、安くない交通費を払って、寝てしまっていては目も当てられない。映画を見終わっての感想は書くまでもない。DVDを買うにしても、劇場へ見に来た甲斐はあった。新編も必ず見に行くだろう。

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 映画館を出たのが17時ころ。帰りは、映画館を出ていく集団のあとを付いていった。大半は浜松駅へ向かうだろう。見覚えのある通りに出たので、もう迷うことはなかった。アーケードを歩いていると、綺麗に光るイルミネーションを見つけた。これは写真に撮っておこうと、携帯を用意したところ、明かりが消えてしまった。そして、僕が通り過ぎても、明かりは灯らないままだった。

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 1時間半掛けて清水駅まで戻り、そこから30分ほどで自宅最寄りのバス停に着いた。予想より遅く、その時点で19時を過ぎていた。数年振りの地元の、夜の景色を眺めながら歩いていると、母親からメールが届いた。夕飯をもう少し待っているという。僕は携帯をバッグに仕舞い、実家までの道を急いだ。
いつまでも変わらない、と思ってしまう信仰。

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もぐさ。僕っ子(大嘘)

Author:もぐさ。僕っ子(大嘘)
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