ハケンアニメ(中)

 無職66日目。昨日行けなかった、派遣だか請負だか契約だかアルバイトだか解らないけれど、便宜上は派遣と呼んでおく会社から紹介された工場との面接である。ネットの地図で確認して、時間に余裕を持って家を出る。万一のために、地図帳を持っていくのは、携帯電話で地図を見られないから。
 最寄り駅の名前は聞いたことがあり、近くの工場で面接を受けた覚えがあったけど、その工場が隣に立っていて驚く。当時は、地名や駅名も聞いたものがなく、電車通勤を前提としていたので、自転車で行ける距離とは考えていなかった。地図を調べてさえもいない。今回は、自転車で行ける距離だったので、最寄り駅が近くとも、仕事場自体が近いとは考えなかったのだ。まさか、壁を挟んで隣り合っていようとは。とはいえ、そこは面接で不採用だったので、隣の工場で働くことに影響はない。
 向かいに公園があったので、そこを目印に向かったら、迷うことなく無事に着いた。思ったよりも近い。これは、電車よりは自転車通勤の方が良い。雨の日は気をつけて自転車に乗るか、電車に乗ってくれば良い。勤務地だけは、かなり理想的である。時間より前に着いてしまったので、公園でしばらく時間を潰す。先に工場の前を通ったときは見掛けなかったけれど、面接時間の5分くらい前に行くと、入口のところで、例のおっさん担当が待っていた。電話を掛けたというのだが、僕は面接の前には携帯電話の電源を切っている。
 自転車を置いて、工場の中へ向かう。事務所のような場所へ行き、そこで担当が事務の人と話し、別の部屋で待たされて、ようやく工場の責任者がやってきた。役職は忘れたけれど、単なる人事というのではなく、偉いさんが採用担当を兼ねているみたい。派遣担当よりも、更におっさんだった。ツナギを着ているので、いかにも作業員、という感じだった。
 会社説明の用紙が用意されており、それを見ながら説明を受けた。そのあとに、工場の面接。偉いさんが先頭に立ち、僕と派遣の担当者で。採用されたら、僕が働く場所と、たまに応援に行ってもらう場所の見学をした。工場の中はやかましく、騒音が平気かどうかを訊かれたけれど、これくらいは大丈夫だった。工場なんて、大抵はやかましいものである。それに、途中で辞めてしまったとはいえ、製本工場のアルバイトを2度やっている。それに比べれば、騒音というほどのやかましさはない。必要であれば、耳栓をくれるそうだけど、おそらくなくても大丈夫だろう。
 仕事内容は、ざっと説明されただけだった。余り深く聞いても仕方がない。実際は、ここで説明されない作業の方が多いのだ。見学のあと、最初の部屋に戻った。あとは、何日までに連絡します、それでは、という流れかと思ったけれど、僕が良ければ採用したいという。それならば、当然、お願いします、と答えるしかないではないか。ここで決まれば、もうひとつの派遣会社の仕事を当てにする必要はなくなる。
 もし、昨日、工場見学に来ていたら、昨日のうちに決まっていたのではないか、と思ったけれど、そのようなことを考えても仕方がない。それは結果論で、仮に午後の面接を断って、こちらの工場の面接を受けていたとして、必ずしも採用されたかどうかは解らない。昨日は昨日で、ベストな選択をしたのだから、1日のロスで良かったとしよう。採用であれば、これまでの経緯を気にすることはない。 
 制服貸与だけれど、用意するのに数日掛かるということで、来週の月曜ではなく、火曜から出勤することになった。つまり、仕事の決まった3連休、土日月が休みになったわけである。正確には休みではなく、無職期間が3日間増えた、ということだけど。2カ月近く無職が続いていたので、仕事の決まった無職期間というのは、とんでもなく嬉しいものがあった。
 そして、家に帰ったあとで。例の如く、この仕事の利点をいくつも上げ、この仕事を大阪で最後の仕事にするぞ、半年で30万円を貯めるぞ、と考えて。仕事の決まった無職期間は、酒を飲んで過ごすのだった。ただ、あえて考えないようにしていたけれど、工場の仕事とは直接関係ない条件、1日休むと時給が減る、ということが気に掛かり、必ずしも吹っ切れていたわけではなかったのだ。
 しかし、採用された仕事を断り、面接に行けるかどうかも解らない仕事を選ぶ気力はなかった。とにかく、先に決まった仕事に行く。それしかなった。そして例の如く、仕事までの3日間、ぐたぐたと酒を飲んで過ごすのだった。

 結論から言うと、辞めるのなら早い方が良い。迷惑を掛けてしまうから、それはできない、という考え方もあるけれど、無理だ、駄目だと思ったら、早々に辞めてしまった方が良い。そりゃ、もう少しだけ頑張ろうと、半年、1年、それ以上勤められる人に対しては、そんなことは言わないけれど。少なくとも、僕に対しては、自分自身に対しては、無理だ、駄目だと思ったら、おそらくはその通りになるだろうことが解っている。情けないことに。

 結局、ここの仕事は6日で辞めた。不本意な辞め方をしたので給料ももらえず。銀行振り込みだからと期待していたけれど、そのようなことはなかった。無断欠勤のち、仕事に行かなくなったわけだから、当然というか、自業自得である。フェアじゃないので言い訳はしない。できない。
 辞めた理由は、主にみっつあって。ふたつが仕事のこと、ひとつが仕事以外のこと。
 ひとつめ。妙な女の子がいた。年齢でどうこう言うつもりはないけれど、同じ派遣会社から来た若い女の子がいて、こんな子供みたいな振る舞いをする人は久し振りに見たな、というくらいで。仕事初日から、ちょっと面倒な子だなあ、と思ったのだが、以降も、やはり面倒な子であった。これまでの職場でも、おかしな人は何人かいたので、我慢できないというほどではなかったのだが。
 ふたつめ。昼休みに過ごす場所がない。初日、食堂へ行ったらかなりの混雑で。空いている席に座ったら、いつもそこに座っているだろう人たちから妙な目で見られて。翌日は別の空いた席を探したのだけれど、そこもまた、決まって座っている人がいるようで。どないしろちゅーねん。翌日から、昼休みに工場を出て、近くの駅前商店街をぐるぐる回ったり、向かいの公園のベンチで過ごしたり、適当に外をうろついていたりした。これが春なら違っただろうけど、いくら昼間とはいえ、12月の外は寒すぎる。工場内に暖房が効いているので尚更。
 そんな環境で、毎日仕事が終わったら酒を飲んで。やっと来た休日にも酒を飲んでいて。土日に飲み食いをし過ぎて、月曜に休むという、これまでと同じパタンをくり返して。ただ、休みはしたものの、辞める気はなかった。これで、時給が80円減ってしまったけれど、これ以上減らさないよう。今後は休まずに行こう、と前向きに考えていた。考えようといていたけれど、明らかに、前向きではないと解っていたのだ。辞めるとすれば、仕事内容ではなく、時給条件が原因だろうと。
 みっつめ。休んだ翌日は仕事に行く。最初こそ、前向きに考えて仕事をしていたのだが、モチベーションが上がらない。先週と同じ仕事をしているのに、時給は900円ではなく、820円になっている。それを承知で休んだというのに。先週の仕事に加え、新しい仕事が増えている。仕事の量が増えているのに、どうして時給が減ってしまうのか。仕事の途中で嫌気が差してしまう。
 計算したのが終わりだった。1時間に80円、と考えれば少ないかもしれないけれど、8時間で640円。ひと月1万4000円。それが入らなくなる。僕に入るはずだっ給料がどこへ行くかというと、派遣会社である。そう考えたときに、もうここで働くのは無理だと思った。前向きに考えられなくなってしまったのだ。
それが、実弾だ。生活に打ち込む、本物の力。

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もぐさ。僕っ子(大嘘)

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30代フリーター。アルバイトで食いつないでいます。

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