傷物語(終)

 そんなわけで「傷物語」最終章。2年越しの完結編。
 簡単に言うと。工場の機械油が原因で、僕の両腕が痛んで腫れてしまった。その原因はなんだったのか、という考察の話である。詳しい経緯を知りたい人は「サグラダ・ファミリア」を読んでね。
 当初の予定とは、内容も構成も変わってしまうけれど、続けるつもりはなかったものを続けようとしたのにも拘わらず、なかなか書くことができなかったのだから仕方がない。「第2の解釈に最終解答を加えた」記事をここで書いておこう。
 症状の悪化した理由が、作業服の下に半袖下着を着たせいだと考え、長袖のシャツに戻したものの、4月になろうという時期に長袖のシャツは暑い。怪我を直すため、長袖の下着を買ったきた。それを着て仕事をしつつ、休憩時間にはきちんと手や腕を洗い、家に帰ったらオロナインを塗ることによって、僕の傷は徐々に治りつつあった。
 というのが、これまでのあらすじ。その続きをこれから書くよ。

 2015年4月16日のことである。痛みのピークから3週間が過ぎていた。
 機械油による腕の腫れと痛み、という大義名分があったので、残業を頼まれることはなくなった。回復するまでは、定時上がり生活である。また、新入社員によるストレスもなくなったので──詳しくは「居場所を守ろう」で書くつもり──機械油に注意しつつ、定時までの仕事をきちんとこなせば良い、という以前よりは落ち着いた作業環境になっていた。
 そんなある日、メインの作業をしている途中、腕時計が原因だったのではないか、という考えが浮かんだ。
 腕が腫れて以降は、腕時計を外して仕事をしていた。腕時計を嵌めているだけで腕が痛く、嵌めるためにはバンドの長さも変えなければいけない。休憩時間にはチャイムがなるし、時間を確認したいのなら壁に掛かった時計を見れば良い。仕事中、僕は腕時計を付けなくなった。それがのちに、腕時計をなくすことに繋がるなるのだが、それはこの件には関係がない(2年越しで書くから時系列が乱れてしまうのだ)。
 腕時計を嵌めて、その上に長袖作業服を着ると、腕時計は長袖に隠されてしまう。それを見るには、もう片方の手で、裾を捲ったり、引っ張ったりしなければならない。確認前に、ウエスで指の油を拭き取ってはいるけれど、水で洗い流したわけではない。いくらかの油が残っているその指で、長袖の裾を引っ張ったり、手首を掴んでいるのなら、裾や手首に油が付くことも考えられる。
 この場合、腕時計を見たあとで、裾を戻してしまうため、休憩時の手洗いでも落ちることがなく、それに気づかないまま、1日の作業を終えることになる。油が落ちるのは、仕事を終えて、家に帰ってシャワーを浴びたとき。それまでずっと、腕は油に塗れたまま。加えて、1日に何度か腕時計で時間を確かめるので、1回の油は少なくても、何回も確認するたびに、腕に付いた油が多くなっていったものだと思われる。その結果、腕の痛みや腫れに繋がっていったのではないかと。
 これが「第2の解釈である」。油の残った指で腕時計を確かめたため、袖や手首に油が付いてしまった、というのはあり得ないことではないけれど。その場合、痛むのは左腕だけになる。右腕の説明ができない。ただ、このとき傷は治りつつあったし、僕が納得すれば本当かどうかは関係がないので、右腕の方は、慣れない作業をしているときに、機械油が引っ掛かってしまったんだろう、という無理やりな考えに落ち着いた。
 というのが、本来は最終章のはずだったけど、「最終解答」に気づいてしまっため、ここまでの考えは「第2の解釈」になってしまうのだ。そんなわけで、これから書くのが、「傷物語」最終章。これで本当に終わりだよ。

 2015年11月2日のことである。
 長袖下着とオロナイン、仕事に対する慣れ、機械油に対する耐性、それら諸々により、痛みや腫れが再発することはなかった。夏場にあせものようなものを見つけたけれど、休憩時にきちんと両腕を洗い、帰宅後にオロナインを塗ることによって、症状を悪化させることなく、回復させることができた。機械油による、腕の痛みや腫れは、遠い昔の出来事になっていた。
 その日は朝から冷え込んでいた。夏の暑さが残っているうちは、半袖作業服(夏服)に半袖下着で続けるつもりだったけど、そろそろ長袖作業服(冬服)と長袖下着に変えた方が良いかもしれない。ただ、冷えるのは雨が降っている朝の間で、仕事を始めるころにはいつも通りの暑さに戻っているかもしれない。とはいえ、悠長に考えている時間はなかった。
 とりあえず、半袖下着で出勤して、どちらにするかは職場に着いてから考えよう。夏服も冬服も、どちらもロッカに置いてある。そこでも寒いような長袖作業服を着れば良いし、暑くなりそうなら半袖作業服を着れば良い。半袖下着であれば、夏服冬服、どちらでも着ることができる。長袖下着の上に、半袖作業服を着るのは避けておこう。斬新過ぎて工場内の有名人になってしまう。
 ところが、ロッカに着いた時点でも、どちらを着れば良いのかはっきりしなかった。どちらでも良いと言えば、どちらでも良いような感じだった。最終的に長袖作業服を選んだのは、天気が悪く、曇りがちであったという理由による。そして、全体朝礼のある日だったので、どちらを着れば良いのかを、悠長に考えている時間はなかった。
 そのため、長袖作業服の下に半袖下着という組み合わせが、かつての、機械油によるかぶれの症状が悪化したときと同じではないか、と気づくのは、仕事を始めてしばらく経ってからである。不味いな。
 以前と違って、機械の使い方には慣れてきており、油の飛び散りは最小限に抑えられるようになっている。また、機械油に対する耐性もそれなりにできているだろうから、今日1日この格好で仕事をしたところで、特に問題はなさそうだけど、かつての痛みや苦しみを味わうことは避けたい。
 とはいえ、仕事を中断して、着替えにいくわけにもいかない。そんな理由で、仕事場を抜けることはできないだろう。それならば、長袖作業服の袖を捲ってしまえば良い。長袖下着と長袖作業服の両方を捲るのは難しいけれど、着ているのは半袖下着である。幸い、気温が上がってきたこともあり、工場内はそれほどの寒さではない。長袖を捲れば、暑さが軽減されるし、油が飛んだときにすぐ気づくことができる。
 そして、両腕の袖を捲ったあとで、これが腕の痛みやかぶれの原因だったのではないか、ということに気がついた。
 欠勤以降、暑さで蒸れないため、長袖作業服の下に着る服を半袖に変えて、腕が蒸れないようにしていたけれど。それでも暑いときは、長袖作業服の裾を捲って仕事をしていた。今の仕事を始めた年は、長袖作業服(冬服)しか持っていなかったので、半袖作業服(半袖)が届くまでは、長袖作業服で仕事を続けなければならない。少しでも暑さを軽減させるには、袖を捲るのは自然な考えだろう。
 かつてのかぶれから8カ月後、僕は真相に思い至った。
 長袖の裾を捲るとき、当然、指先をウエスで拭うけど、油の拭き取りは完全ではない。油の飛び散りに気づかない場合、袖は長袖のままである。休憩時に洗うのは、外部に晒された腕だけで、長袖で覆われているときには洗うことはない。つまり、袖を捲ったときに少なくない油が腕に付いてしまうけれど、そのことに気づかず、袖を戻したり、長袖のままで仕事を続けてしまう。その結果、腕に残った油が少しずつ堆積されていき、限界が来たときに、早退、欠勤に至ってしまったのではないかと。
 これなら、両方の腕が腫れて痛んだことも説明がつく。左腕は腕時計、右腕は慣れないのため、という牽強付会な理由づけよりは納得できる。本当かどうかは解らないし、確かめようがないのだから、僕が納得できれば構わない。痛みや腫れが治っていないならともかく、一時のひどい状況が嘘だったかのように、両腕は回復しているのだ。自分の推理を信じよう。
 対策として、長袖作業服(冬服)のときは、袖を捲らないで作業をすること。働き始めた当初と違い、機械油の飛び散りは最小限で仕事ができるようになっている。手を洗うときなど、捲らなければいけないときは、裾を捲るときは肘の辺りの衣服を引っ張る。これなら、作業服の外側に少し油が付くくらい、中の腕には影響しない。
 症状の悪化した、作業服に半袖下着という着方をしたことにより、症状が悪化した気がつくとは。なんという皮肉。あるいはただの偶然か。冷え込みがひどかったのはこの日だけだったので、翌日からは半袖作業服に半袖下着に戻した。11月下旬になって、長袖作業服に長袖下着に変えた。これまでは、半袖の下着しか持っていなかったけど、両腕のかぶれによって購入した長袖下着が役立つときがきた。1枚900円近くもしたのだから、使えるときには使っておかなければ。
 それ以降、機械油による腫れや痛みといった症状とは無縁である。

 そんなわけで。2年掛かってようやく「傷物語」を書き終える。って、長過ぎだろ。もっと短く簡潔にまとめるはずだったのに。結果的に、2017年の5月の連休、その4日間(ブログ書きの時間)を費やしてしまったわけだが。とにかく書き終わったので良いとしよう。
 どうしても書いておきたかった、というほどの出来事ではないけれど、書いておきたいと思ったのだから仕方がない。タイトルだけ上げて書いていない記事を、着実に書いていかなければ。次はようやく「居場所を守ろう」か。時期的には「傷物語」とほぼ同じ。これもまた、2年前に書こうとした記事なんだよ。
戦うことで、安全が保障できるという幻想がある。

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