衛生工場

　コロナ解雇から再就職までの経緯を書いていないので──書くつもりではいるのだが──今の職場を新しい仕事だとか、時給1200円の仕事だとか書いているけれど、便宜上の名前をつけておこう。衛生用品を扱っているので衛生工場。これに決めた。
　僕の安全と会社への迷惑を考えて、具体的な商品や仕事の内容を明かさないのはこれまでと同様。僕が勤めた仕事をいくつか上げると、百貨店内書店、みなみの書店、湾岸倉庫、サンダル工場、NC旋盤、といったものがある（全部上げると切りがない）。百貨店内にある書店だから百貨店内書店、南の方角にある書店だからみなみの書店、港にあるから湾岸倉庫、サンダルを作るからサンダル工場、NC旋盤を使うからNC旋盤、といったネーミング。
　百貨店内にある書店、南の方角にある書店、港にある倉庫、サンダルを作る工場、NC旋盤を使う工場は全国にいくらでもあるだろう。これは、僕が利用する店の名前を書くときも同じ。スーパー玉出は関西にいくらでもあるので、スーパー玉出と書いている。自宅最寄りスーパは、チェーン店ではなく一店限りの店なので、名前を書いていない。
　湾岸倉庫で扱っていたのは某有名メーカの商品なのだけど、そのメーカの関西倉庫がこの一棟だけなので、会社名を書くことができなかった。また、サンダル工場で使っていた機械が、「汎用人型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオン」みたいに格好良い名前だったので紹介しようと思ったけれど、この国で使っているのはここ一社だけだったので諦めた。一般名詞は使うけど、固有名詞は使わない、と考えてもらえれば良い。
　今の仕事、衛生工場は衛星工場のダブルミーニングでもある。中央にあるメインのコンピュータを囲むように、ぐるりと複数の機械が設置されている。それらを扱う従業員の動線は、必然と衛星軌道になる（東京都民みたいに）。また、生活必需品を生産しているせいか、前回の緊急事態宣言、今回の緊急事態宣言の影響をまったく受けない（僕が利用しているネットカフェは去年の4月以降営業を再開していない）。
　今の職場でできるだけ稼いで、充分な資金を蓄えたあとで地元に帰ろう。そのためには、酒とつまみを控えなければならない、という何度もくり返したオチ。